
「構造の美」の精神
私たちがつくっているのは、人々が憩い、暮らす場所です。建築は構造物であるだけでなく、そこに生きる人々と共に時を重ね、風景にとけ込み、やがて思い出の一部となっていきます。設計とは、未来描く仕事であると同時に、過去をも築く仕事なのです。つまり、建物には社会の共有財産としての側面がある、ということです。ですから依頼主はもちろん、地域の人々からも受け入れられる懐の広さが必要となります。かといってあれもこれもと詰め込んでしまっては、すべてが中途半端になってしまいます。
私たちが志すのは、しかるべき「構造美」に主軸を置いた建築。なぜその姿になったのか、なぜその構えになったのか。そこにあるべくして存在する建築です。例えば、自然の造形は美しい。山や川は、風雨や重力にさらされながら、自然の摂理に応じた姿形を作り出します。動物や植物は、進化の過程の中で、生き延びるために最も適した美しさを獲得してきました。自然の造形は、構造的・力学的に無理のない、理にかなった姿。だからこそ、私たちは美しさを感じるのです。建築もまた、同様です。その建物の目的や規模、立地などの条件を勘案し、明確な合理性に沿って構成要素を見極めること。構造体と意匠を融合させ、主観や流行に左右されない普遍的な構造美をデザインとして表現すること。そうすることで、風土や環境に調和しつつ、人々の暮らしに寄り添う建物を実現していく。それが、私たちが目指すアプローチです。