INTERVIEW

社員インタビュー

大型公共施設から、
さまざまな民間案件まで、
社内外の関係者との連携で、
高度で幅広い実績を積める職場です。

德田 明洋

建築部 リーダー
一級建築士
2011年入社

—設計の道へ進んだ理由を教えてください。
子供の頃から電池を使用した工作が好きで、小さなライトなどを自作していました。高校生になると照明器具を見学するためインテリアショップに通うようになりました。それがきっかけとなり、美しくディスプレイされた部屋全体へと興味の対象が広がり、やがて建築の道を志望するようになっていきました。
大学では建築学科へ進んだのですが、そこで教授から「建築は芸術、工学、心理学などの領域を併せ持つ幅広い学問」という言葉を聞いた時、体中に電流が走ったような衝撃を感じました。そのスケールの壮大さに「設計こそ、一生かけて成し遂げるに値する職業だ」との思いを強くしたことを、今でもはっきりと憶えています。
—就職先としてAIS総合設計を選んだ理由は?
いわゆるアトリエ系やゼネコンという選択肢もありましたが、前述の教授から「若いうちに大きい仕事を経験しておきなさい」とアドバイスをいただいたことから、総合設計事務所への就職を目指すようになりました。ゼネコンでも大きな仕事には関われますが、設計よりも建設が事業の主軸です。それに対し、総合系はあくまで設計がメインストリームですし、より幅広い分野でキャリアを積めることが決め手となりました。
就職先は地元が希望だったので、宇都宮の総合系事務所について調べていく中で心を惹かれたのがAISでした。プロポーザルの案件などで、先進的な建築スタイルに意欲的に取り組んでいると聞いたからです。入社してすぐにその姿勢を実感することになり、採用していただいて本当に良かったと思っています。東京の設計事務所にも勝るとも劣らない独創的な提案力に、クライアント様からも高く評価をいただいています。
—実際に就職して、どのように感じましたか?
学生の頃は、設計思想や意匠表現に重きを置いたコンセプチュアルな建築を学んでいました。ところが実際の現場では、期日と予算という制約の中で、実施図面の精度を高めていくことに多くの時間を割いていました。これはちょっとしたカルチャーショックで、それまで僕たちが「設計」と呼んでいたものは何だったのかと。まあ、今考えれば当たり前なんですが、当時はとにかく衝撃的でした。それから、学生の時は基本的にすべての工程が自分の中で完結していたのですが、実務では社内外の多くの方々とコミュニケーションをとる必要性があり、その重要性も学びました。
また、大学院では一つの課題に集中して取り組むことができましたが、設計の現場においては複数の物件を同時並行で掛け持ちしなくてはならず、仕事の優先順位付けと頭の切り替えも大切となります。
戸惑うことも多かった新人時代ですが、自分も早く役に立つ人材になりたくて、まずは基礎的なスキルを付けることに集中しようと。ひたすら図面を書いては先輩に指示を仰ぐ、という作業を繰り返しました。何か疑問点があれば、すかさず上司や先輩に質問をして…。僕のような駆け出し社員の質問にも丁寧に答えてくれる、面倒見の良い先輩方に恵まれたことで、徐々に経験を重ねていくことができました。
しばらくすると、それまでバラバラに存在していた平面図と立面図、断面図の関係性が読み取れるようになりました。立体的なイメージをつかむスキルが身についたことで、以前にも増して仕事にも熱が入って…。建物の全体像が見えると、パートごとの設計で精一杯だった頃と比べ、自分のやるべき仕事が自然と理解できるようになったんです。そうやって基礎力が付いたことが役に立ち、入社2年目で念願の「一級建築士」に合格することができました。
—建築士の資格取得後、どのような仕事をされましたか?
弊社では、設計の実務を監修する「担当者」と、担当者が仕上げた図面をチェックしたり、依頼元や施主様と折衝を行う「責任者」を中心としたチームワークで業務を進めていきます。一級建築士になると、まず初めは、この「担当者」として物件を任せられるのですが、僕の場合は100m2ほどの木造平屋の薬局が最初の受け持ちでした。比較的規模の小さい案件ではあったのですが、それまで木造建築に携わったことがなかったため、内心では不安もありました。RC造や鉄骨造と基本は変わらないはずですが、裏付けとなる経験や知識がありません。で、とにもかくにも勉強しなくては、と。書籍やインターネットなどで情報を集めたのはもちろんですが、一番参考になったのは過去に弊社で手がけた「木造設計の図面」でした。幸い、直近の実績として木造平屋の老人福祉施設の案件がありましたので、特にその図面を何度も繰り返し読み込み、柱の寸法や梁の強度を導き出す際の手引きとして有効活用させてもらいました。
小規模の薬局だったので意匠設計に関しては自分一人でカバーできたのですが、社内の構造設計担当者や社外の電気機械設計担当者との調整には苦労しました。デザイン面での要求と、構造面や強度面などの事情をすり合わせながらの、建物全体を俯瞰した設計が求められるからです。上司のサポートのお陰でやり遂げられましたが、キャリア不足の僕にとっては難しい課題の連続でした。ただ、この案件を最初に手掛けたことで、基本設計から実施設計、現場管理や竣工までの一連の流れやスケジュール感を把握できたのは、それ以降の実務においても貴重な経験として役立っています。
ちょうどその頃は、設計の現場にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデル)を取り入れる事務所が増えている時期でした。もちろん弊社でもその活用を推進していたため、担当を持つようになったことをきっかけに、僕自身も積極的にBIMによる設計に取り組むようにもなりました。
担当者として二つ目の案件は、宇都宮市立一条中学校の新校舎でした。先ほどの薬局店舗とは打って変わって、今度は10,000m2以上の巨大な建物です。そのため、一般教室や特別教室、給食室などエリアごとに担当者が任命され、僕は体育館とエントランスホールを受け持つことになりました。とは言っても、自分の担当箇所だけに注力すれば良いわけではなく、やはり他のエリアの担当者とこまめに連携をとりながら、全体として調和のとれた設計に仕上げることが必要です。また、構造設計や電気機械設計、さらには建築主である宇都宮市や教育委員会、施工を請け負うゼネコンなど、多くの関係者との意見調整も必要となります。大規模な公共建築ならではの苦労でしたが、その分やりがいも大きな仕事だったと感じています。
その後に担当した農産物直売所では、それまでの二件で積み上げた経験が存分に活かされました。東日本大震災の復興需要と東京オリンピックの建設ラッシュが重なったこともあり、RC造や鉄骨造の施工コストが上昇している時期でしたので、僕は上司と相談し、直売所という用途にも適しており、かつ周囲の環境とも調和する木造平屋造りを提案しました。ネックとなったのは、それまで以上に関係者が多い案件だったこと。というのも、直売所に農産物を納入する複数の近隣農家が事業主体であり、多大な人数を相手に設計の趣旨やポイントを説明しなくてはならないのです。それぞれの農家さんは個別の思惑や要望があるため、私たちへの依頼内容も多様です。限られた予算と納期の中で相反する様々な意見を可能な限り取り入れつつ、多くの方に納得してもらえる施設づくりを目指し、構造や電気機械と相談しながら設計プランを作成しました。さらに何度も説明会を開催しては話し合いを重ね、その度にプランを再検討したのです。そういった努力の末どうにか導き出した最適解を、再び構造や電気機械、施工業者と共有しながら具体的な建築物へと落とし込んでいきました。
学生の頃は美しい建物、カッコいい建物を作る仕事が設計だと思っていたのですが、実際は多くの関係者との密なコミュニケーションこそ、この仕事の真髄であると理解させてもらった仕事でした。
—現在の仕事内容を教えてください。
下野市の9年制の小中一貫校の案件に携わっています。学区内の市立小学校を統合し、中学校の敷地内に開設する新校舎の設計です。現在はリーダーとして部下を持つ立場となったこともあり、設計に向き合う姿勢もそれまでと180度変わりました。部下たちは一条中の仕事を受け持っていた頃の自分のような立場です。ひとり一人の意欲や不安に寄り添いながら、個々の能力を存分に発揮できるようまとめていかなくてはなりません。以前は自分の業務範囲やスケジュール管理をきちんとこなすことが仕事だったのが、今度は部下全員の仕事具合や進捗状況まで管理しなくてはなりません。「こっちの仕事はこの時期までの提出が必要だから、彼に任せたあの仕事は〇〇まで、彼女に任せた仕事は△△までに仕上がってこないとマズイな」といった感じで、それぞれの部下に心配りをしつつ、一方では全体での工程管理も把握し、高い視点から最適なタイミングでの指示が必要になります。また、設計の要点や思想をチーム全員が共有できるよう、わかりやすい説明や表現も求められます。こちらの意向とは異なる図面が上がってきてしまった場合などは、あらためて丁寧に話し合い、趣旨を理解してもらった上で再度の取り組みを促します。時としてこちらの意図とは違う結果ながらも、良好な提案が上がってくることもあるのですが、そんな時は「なるほど、こういう考え方もあるか!」と柔軟な姿勢で取り入れるよう心がけています。そうすることで部下のモチベーションアップにもつながりますし、何より自分自身にとっても刺激になるからです。
部下を持ち、チームとして仕事に取り組むようになった一番の収穫は、設計全体を客観的・俯瞰的に眺められる視野の広さを持てたことだと思います。これは、JVなどより多くのスタッフが関わる大規模案件の時はなおさら必要なスキルです。自分のチームや自社だけでなく、共同で設計に当たる他の事務所とも緊密な意思の疎通を図り、複雑な設計を細部まで煮詰めていかなくてはなりませんから。そのような時にこそニュートラルな立場で全体を眺めることで、より良い結果を導き出せるのではないでしょうか。
—仕事の中でやりがいを感じる瞬間は?
自分が設計に関わった建物が初めて竣工した時の高揚感は、今も忘れられません。
それまで紙に線で書いてきたものが現実になる。それが、この仕事の一番の醍醐味です。実際に完成した建物を目の当たりにすると、当初思い描いていた通りにできている部分も、あるいはイメージとは異なって仕上がっている部分もあるのですが、それぞれがとても輝いて見えました。
工事監理で現場に足を運び、自分の図面が日を追うごとに立体化されていく様を眺めていると、今でも心が高鳴ります。と同時に、完成後にその施設を利用される方々の姿が思い浮かび、あらためて身が引き締まる思いになります。
—今まで携わった仕事で思い入れのある建物を教えてください。
やはり何と言っても一条中学校ですね。職場から近いので、近くを通りかかる機会も多い建物です。眺めるたびに、周囲の景観と調和しつつも、公立学校の設計におけるセオリーにとらわれない、独創的な意匠性が感じられるなぁと。自画自賛ですが(笑)。隣接する栃木県立特別支援学校も含め、エリアを一括して弊社で請け負ったこともあり、のびやかで広がりのある空間に、縦横のグリッドを主軸として共通のデザインがシンメトリーで向き合っています。宇都宮でも歴史のある地域に建てられており、特産の大谷石造りの塀や蔵で構成される昔ながらの街並みと馴染むよう、側面には石積み風のモチーフを取り入れています。道を挟んだ向かい側には昭和の時代に建てられた市立西原小学校がありますが、互いに違和感なく調和を保っているのも特徴的です。特に西原小の桜の古木が咲き乱れる春は、エリア一帯を考慮した空間構成がより一層際立ちます。
—AIS総合設計で働く魅力とは。
思ったこと、考えていることを提案できる職場です。建築の質の向上につながる提案であれば、キャリアの長短に関わらず主張を受け止めてくれる土壌があります。そこには新人とベテランの垣根は存在しません。固定観念や既存の常識に囚われない、新しい発想が求められています。僕もまだ入社して日が浅かった頃に提案したデザインが通った経験があります。
当然ながら、論理的・客観的立場から却下されることも多いのですが、思いもよらなかった視点からの指摘は、自身が成長する上で大いに勉強になります。AIS総合設計は、どんどん意見を持って発言する人が、成長の機会により恵まれる場所と言えるでしょう。早ければ入社4年目で担当を任されるので、具体的な目標を持ちつつ高いモチベーションで自己研鑽に励むことができます。
そのほか、公共建築や商業施設、マンションや住宅まであらゆる建築を取り扱っていることも、AISの魅力かもしれません。多種多様な物件に携わる中で、設計士としての可能性を磨いていくことができます。そうして経験を積み重ねていく中で、幅広い引き出しをもつゼネラリストとしての道を拓くこともできますし、自分の得意分野を見つけてスペシャリストとしての道を歩むこともできます。
幅広い案件を扱うため、行政やデベロッパーから「この土地でこのようなことをしてみたいけど、良いプランはある?」といった感じで、自由な提案を求められる機会も少なくありません。設計というと、決められた「枠」の中でより良い提案を導き出す作業だと思うかもしれませんが、AIS ではその「枠」自体を提案することもあるのです。つまりそれは、単に建物を設計するのではなく、街全体をデザインする仕事。そのために必要なのは、クリエイティブで視野の広い感性です。学生の頃は設計という範囲の中で専門的に深く掘り下げていきますが、実際の現場では社会全体に幅広くアンテナを広げていくことが、より良い提案を生み出す原動力となります。建築だけでなく、経済やトレンド、世代ごとの志向など、様々な事象への好奇心を養うことで、社会に役立つ街づくりに貢献できるのです。そのような刺激に満ちた環境こそ、この事務所の最大の魅力でしょう。